上の子がおなかにいる時、御茶ノ水にある大きな産婦人科病院に通院していました。
道を挟んで大きな予備校がありました。
ある秋の日、定期検診が終わり病院を出ると雨が降ってきました。
なかなかやみそうにありません。
「傘を持ってくればよかった、どうしよう…駅まで近いし、走ろうか…」
赤いマタニティワンピースを着ていて、
体重が20㎏近く増えていた私は、まるでダルマのよう…
「この姿で駆け出したら周りの人たち、ギョ!っとするだろうな~」
雨の中、速足で歩きかけた私の頭上に大きな黒い傘が。
横にすらっとした色の白い青年が無言で…
「あ…すみません。ありがとうございます。予備校…授業…大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
お互いにそれ以上話すこともなく、間もなく駅に着きました。
「ありがとうございました。助かりました。受験、頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます。がんばります。」
青年はくるりと踵を返し、また来た道を走って戻っていきました。
「あのお兄さんみたいに優しい子に育ちますように…」
あの時18、19才? 今はもう45才くらい?
志望校に合格できましたか?
大学生活は楽しかった?
今、幸せですか?
あの時おなかにいた子は、昨日26回目の誕生日を迎えました。
おかげさまで…ありがとう…
心優しい青年が幸せな人生を送れる社会でありますように…
平和な日本であり続けますように…